Research Grant

研究助成

構造化証明式3Dスキャナによる健口年齢測定の検証補助事業

2025年度 機械振興補助事業 研究補助 若手研究

研究の背景

超高齢社会を迎えた日本において、要介護状態の一歩手前である「フレイル(虚弱)」の予防はとても大切です。なかでも、食べる・しゃべるといったお口の機能が衰える「オーラルフレイル」は、全身の筋力低下や体力低下に直結するドミノ倒しの最初の1ピースとして、非常に注目されています。

現在、行政などによってお口の健康意識を高めるプログラムが各地で行われていますが、お口の機能低下は目に見えにくく、自分では気づきにくいという課題があります。そのため、高価な専門機器や特別な検査に頼らず、「身近なデバイスを使って」「いつでも」「手軽に」自分の口の状態を客観的に知る手段が求められています。

研究の目的

本研究は、多くの人が日常的に持ち歩いているiPhoneに搭載された顔認証技術(TrueDepthカメラ)を利用します。

共同研究者(東京電機大学)が開発した既存の咀嚼解析アプリケーション「Mastication」をベースに、私たちはこれを臨床の現場や地域健診、さらには在宅医療の現場へ導入するための「最適な計測ルール(カメラの距離や角度)」を整備しました。

大学病院での実際の患者様を対象とした検証
岩手医科大学附属病院歯科補綴科外来において、実際に口腔機能低下症と診断された患者様や健康なボランティアの方々にご協力をいただき、現在、実際のデータ収集と解析モデルの検証を行っています。

お口の動きを立体的にとらえる
iPhoneを向けて普段通りにグミやガムを噛むだけで、1秒間に60回(60Hz)という超ハイスピードでお顔の立体的な動き(3D点群データ)をキャプチャし、お口やあごの微細な動きをデータ化します。

お口の衰えのサインをキャッチする
お顔の3Dデータの中から、あごの動きを最もよく反映する「オトガイ(あごの先)」や「口角(唇の端)」などのポイント(関心領域:ROI)を自動抽出し、噛むスピードや不規則性を数値化します。

研究の結果

共同研究者である武政教授(東京電機大学)らが開発した咀嚼解析システムをベースに、実際の医療や健診の現場で活用するための検証を行いました。

誰でも安定して測れる「ルール(プロトコル)」の確立 撮影する部屋の明るさや、iPhoneとお顔との距離(25〜50cm)、角度などの条件を細かく検証し、専門知識がない人でも常に同じ精度で安定してデータを記録できるマニュアル(標準計測プロトコル)を完成させました。

お口の動きを捉える「重要ポイント」の選定 iPhoneのカメラが捉える網羅的な立体データの中から、お口の衰え(フレイル)のサインが出やすい「オトガイ(あごの先)の頂点」「オトガイの下」「唇の左右の端」といった特定の場所を解析の対象(関心領域:ROI)として選定しました。

実際のデータから「噛む動き」の特徴を数値化 これらのポイントが咀嚼(噛むこと)や嚥下(飲み込むこと)の際にどのように動くかを解析し、あごが上下左右に動く量、噛むスピードのバラつき(不規則性)、喉が動く速さといった、お口の機能を評価するための様々なパラメータ(指標)をデジタルデータとして正確に抽出する流れを整えました。現在、大学病院の専門外来を受診された高齢の患者様や健康なボランティアの方々にご協力をいただき、実際のデータを蓄積しながら検証を進めています。

実社会への展望:この技術がひらく未来と社会への還元

この研究が実用化され社会に広がることで、次のような新しい予防医療のカタチが実現します。