Research Grant

研究助成

安心・安全な食提供を実現する在宅で使用できる小型粘度計開発補助事業

2022年度 機械振興補助事業 研究補助 個別研究

「現場仕様」へ:小型化・防水化

① 研究の目的と背景

2021年度に開発した原理試作機は、レオメータに匹敵する高い計測精度を証明し、私たちの独自手法が正しかったことを裏付けました。この成果を、「とろみ度測定装置及びとろみ度測定方法」として特許を出願(特願2022-148576)しました。

しかし、実用化への道にはまだ高い壁がありました。初期モデルはシステムの有用性を検証するための「検証機」であったため、片手で扱うにはまだ大きく、また介護現場や家庭の台所で不可欠な「水洗い」ができる防水性能も備わっていませんでした。 そこで、2022年度は、この特許原理をそのままに、実際の生活環境でストレスなく使用できる「小型化」と「防水化」という、製品化に不可欠な2つの要素を組み込むことを最大の目的として研究を実施しました。

② 開発内容

25%の小型化と、過酷な使用に耐える防水構造の実装

本年度の開発において、まず着手したのはデバイスの徹底的なダウンサイジングです。

限界に挑む小型化設計

従来の初期モデルは最大直径が約40mmありましたが、これを30mmへと絞り込み、さらに実際に溶液に触れる計測部位の直径を20mmまで縮小することで、全体として約25%の小型化を目標としました。単に外装を小さくするだけでなく、限られたスペース内にモータ駆動部や回転-直線変換機構を配置し直すため、内部構造をゼロから再設計しました。これにより、女性や高齢者の方でも片手で軽快に操作できるサイズ感を実現しました。

高精度な粘度解析

独自の「6軸力覚センサ」を用いた計測では、攪拌(かくはん)羽根に加わる3方向の力と3方向のモーメント(計6つの出力値)を詳細に分析しました。多くの市販とろみ剤を用いて検証した結果、特に「回転モーメント(Mx)」が粘度の増加と極めて高い相関を示しました。このMxパラメータを用いることで、非ニュートン流体であるとろみ剤溶液においても、既存のレオメータとの相関係数が0.9を超える、精度の高い粘度計測を実現しました。

使いやすさの追求

一般的に粘度は「Pa·s」という単位で表されますが、私たちは将来の在宅使用を想定し、あえて複雑な数値表示を避ける設計としました。ユーザーが求めているのは精密な数値ではなく、「今日の食事が安全なレベル(例:5段階評価)にあるか」という直感的な指標であると考えました。

実用性を支える防水・耐久性能

「汚れたらすぐに洗いたい」という現場のニーズに応えるため、攪拌部とセンサの間に特殊なベローズ(蛇腹構造)を導入しました。センサ基板やアンプ基板の接合部に防水用接着剤を塗布し、連続10回の水洗い試験を実施。内部への浸水はなく、計測精度にも影響を与えない「現場基準」の防水性能を達成しました。

2022年度の成果により、開発を行っている粘度計は、臨床や介護の現場で用いることのできる実用的なデバイスへと進化を遂げることができました。