Classroom introduction

教室紹介

「食べる」を科学し、健康と未来をデザインする

私たちの身体は、日々の食事によって作られ、食べる喜びによってその心は満たされます。しかし、私たちが何気なく行っている「味わう」「噛む」「飲み込む」という一連の動作の裏側には、驚くほど精密でダイナミックな生命のメカニズムが隠されています。

岩手医科大学 歯学部 病態生理学分野は、この当たり前の中に潜む「未知の仕組み」を科学の力で解き明かすことを目指しています。生命の不思議に向き合い、未来の歯科医療へと繋げたいと考えています。

私たちのビジョン:
口腔から全身のウェルビーイングへ

歯科医療の原点は「口腔機能の維持」です。口は、栄養を摂取する入り口であり、会話を楽しむコミュニケーションの場でもあります。私たちは、基礎研究(生理学)というレンズを通して、口腔の健康がどのように全身の健康を守り、豊かな人生を支えているのかを追求しています。

“生理学の知見を、人々の幸福な未来へと変換する” このビジョンのもと、私たちは皆さんが一生涯にわたって健康で、自分らしく暮らせる社会をデザインしていきます。

3つの方向からのアプローチ

1.探究:生命の仕組みを「科学」する

脳はどのようにして数千回におよぶ日々の「咀嚼(かむこと)」や「嚥下(飲み込むこと)」という運動を、脳はどのような指令で完璧にコントロールしているのか?私たちは、これらの感覚・運動の神経メカニズムに、電気生理学や行動解析といった最先端の技術を用いて探求しています。さらに、加齢や疾患によって生じる運動障害のメカニズムを分子レベルで解析することで、新たな対処法の確立に向けた基礎固めを行っています。

2.教育:次世代の歯科医師を「育てる」

生理学は、臨床におけるすべての診断・判断の土台となります。私たちが教育において最も大切にしているのは、単なる教科書の暗記ではありません。刻々と変化する生命現象を論理的に捉え、自ら問いを立てる力を養うことです。学生一人ひとり「なぜ?」という好奇心を持ち、それを科学的根拠(エビデンス)に基づいた臨床推論へと結びつけられるよう導きます。

3.実践:社会の健康を「デザイン」する

大学での研究成果は、論文として世界に発信するだけでなく、人々の生活に届いてこそ真の価値を持ちます。私たちは本ホームページを通じて最新の知見を分かりやすく公開するほか、岩手県を中心とした北東北地域において「カムカム健康プログラム」を精力的に展開しています。 高齢者のフレイル(虚弱)予防や、口腔機能の改善を通じた地域住民の健康増進など、現場の声に耳を傾け、研究で得た「知」を具体的な支援の形へと変換し、大学という枠組みを超え、より良い未来の生活を地域自治体と共にデザインしていきます。

教授:黒瀬 雅之からのメッセージ

「なぜ?」を解き明かし、確かな医療の礎を築く

歯科医師として臨床現場に立つとき、歯科医師は目の前の患者さんに接する中で、数多くの疑問「なぜこの患者さんに、この痛みが出るのか」「なぜこの機能が失われてしまったのか」に直面するはずです。目の前の患者さんの症状に対し、深く問いかけ、科学的根拠に基づいて的確な判断を下す。この「臨床の思考力」を養う学問こそが、生理学です。

私たちは、咀嚼・嚥下といった、人間の尊厳や生活の質(QOL)に直結する口腔機能のメカニズムを研究しています。一見すると、研究室で行われる作業は地道で遠回りなものに見えるかもしれません。しかし、ミクロな視点での神経の働きや、脳内のシグナル伝達の知見こそが、人々の健康長寿を支える確かな「デザイン図」になります。 「大学は研究の拠点であると同時に、社会への貢献の場である」 これは、私が影響を受けた指導者から伝えられた信念です。岩手という豊かな風土に根ざし、ここから様々な研究成果を発信し、さらに、その成果を地域の方々へと繋げていくこと、基礎と臨床、そして社会を繋ぐ架け橋として、当分野は歩み続けてまいります。